生きるって、楽しくってハンセン病を生きた山内 定・きみ江夫妻の愛情物語

片野田 斉 著
2012年10月刊行

定価1,650円(税込)
A5判 ハードカバー 64ページ

〈本書の内容〉
 本著は、元ハンセン病患者山内夫妻に2年半密着撮影した写真集です。ハンセン病患者達は、かつて国が定めた「らい予防法」により社会から強制的に隔離され、強制労働、差別、偏見の中で息を潜めてひっそりと生きてきました。

 2001年5月隔離政策が人権を著しく侵害し違憲であると国が全面的に謝罪した判決をきっかけに、東京都東村山市にある多磨全生園で50余年にわたり生きてきた山内夫妻は、ごく普通の市井の人として生涯を終えたいと決心。夫の定は持病を患い療養所の入退院を繰り返していたため園に残り、「一人の人間として生きて欲しい」と妻きみ江を外の世界へ飛び立たせました。70過ぎの高齢と重度の障がいをもつ、きみ江に世間は冷たかったが決して諦めませんでした。きみ江は、ハンセン病の後遺症から両手、両足が知覚麻痺、運動麻痺をおこしています。熱いフライパンを触っても、釘を踏んで足を貫通しても痛みを感じないが、「どんなに体が不自由でも自力でやりたい。いまが青春」と常にポジティブに行動し、隔離されていた空白の時間を取り戻すかのように社会で生きる喜びを実感しています。子供を持つことが許されなかった夫妻は養女をもらい、養女は結婚し孫をもうけました。「この世に生をうけてよかったなと思う。女として結婚し、子供ももらい孫も抱けた。」と女としての幸せも噛みしめています。タイトルの「生きるって、楽しくって」はきみ江さんが取材中に何度となく著者にこぼした言葉です。

 本書は、孫の誕生、日常生活、ハンセン病のこと、定の死、震災以降の生活を撮影。山内夫妻を通してハンセン病をわかりやすく知る構成になっています。元患者たちは家族と絶縁状態が多く、静かに余生を送りたいなどの理由から取材にはほとんど応じてくれません。元患者たちは平均年齢も80歳を越え毎月のように亡くなっている現在、本書は貴重な記録となると信じており。また、生きることに少々疲れている人たちに「元気」を届けます。是非全国の多くの方に目を通していただきたい一冊です。

[著者略歴]
 報道写真家。1960 年生まれ、東京都東村山市出身。明治学院大学卒。NHK 映像取材部助手を経て報道写真家・山本皓一氏に師事。主に週刊誌でスポーツ、政治、芸能、ニュース現場を経験。
 2001 年9 月11 日に起こった米国同時多発テロ事件に衝撃を受けイスラマバードへ。パキスタン、アフガニスタン、パレスチナ、イラクなどの紛争地を取材。北朝鮮、アメリカ大統領選、中国・河南省エイズ村、 山西省炭鉱 四川大地震、北京五輪、ビルマなどのルポルタージュを発表。2011 年東日本大震災を翌日から延べにして4 ヵ月取材。ニューヨークに拠点を置く世界的写真通信社「Polaris Images」メンバー。震災の写真も欧米主要メディアに掲載される。訪れた国は30 ヵ国を数える。